FrontPage
ヴァーノン・リーの世界

このサイトでは19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍したイギリスの女性作家ヴァ―ノン・リー(Vernon Lee)を紹介しています。
日本では、一部の幻想文学ファンを除いてほとんど知られていないと思われるヴァ―ノン・リー。しかし、2015年、リーの代表的な短編をまとめた作品集の邦訳が出版され、日本の読書界にもヴァ―ノン・リーの魅力が知られることが期待されます。
欧米でもヴァ―ノン・リーは長らく忘れられた存在でした。しかし、1990年代くらいから、徐々に復権が進んでいます。数年前までヴァ―ノン・リーの原書を入手するのが困難な状態でしたが、今日では彼女の作品のほぼすべてが入手可能です。リーの祖国イギリスでは国際的なヴァ―ノン・リーの学会が開催されています。リーに関する研究論文も増えてきています。
ヴァーノン・リーの仕事は多岐にわたります。詩こそほとんど書きませんでしたが、小説(長・短編)、劇、旅行記、エッセイ、美術評論、音楽評論(特に、18世紀イタリア音楽の研究においては、その先駆けとなった)などに手を染めています。大陸ヨーロッパで育った国際人で、作品は英語で執筆していますが、ドイツ語、フランス語、イタリア語にも堪能でした。リーには多数の書簡がのこされていますが、兄ユージーン宛ての手紙をはじめ、その一部はフランス語で書いています。
今日ヴァ―ノン・リーが再び注目集めているのは、主としてフェミニストとしての活動が評価されるがゆえです。欧米の研究者の論文を読むと、フェミニストとしてのヴァ―ノン・リーという視点から論じるものが多数を占めています。また、彼女はレズビアンであり、生涯独身を貫きました。筆名にも「ヴァ―ノン」という男性名をつけ、男物の服をまとい、攻撃的な性格だったこともあり、多くの敵をつくる結果にもなりました。リーは"I am sure no one reads a woman's writing on art, history or aesthetics with anything but mitigated contempt."と友人への手紙の中で述べています。レズビアンの立場からの女性の権利を擁護していることも、今日ヴァーノン・リーが注目を集める由縁でしょう。
また、第1次世界大戦が始まると、戦争に反対する立場からの発言をするようになります。晩年のリーは平和主義者としてのイメージが強くなります。
今日、彼女の作品中、読んで一番面白いと思われるのは幻想短編でしょう。特に、短編集Hauntingsに収録された諸編はグレードの高い幻想文学です。イギリスのゴシック小説研究家オーガスタス・モンタギュー・サマーズ(Augustus Montague Summers, 1880~1948)はいち早くヴァ―ノン・リーの幻想小説に注目した一人です。彼は"Lee's stories are really a category by themselves. Intelligent, amusingly ironic, imaginative, original, they deserve more than the passing attention that they have attracted."と書いています。
そんなヴァーノン・リーを、その生涯、作品、交友関係などから紹介することを意図したサイトです。