ゴーティエ
テオフィール・ ゴーティエ (Théophile Gautier)

1811~1872年。本名ピエール・ジュール・テオフィール・ゴーティエ(Pierre Jules Théophile Gautier)。フランスの小説家、詩人、劇作家。唯美主義派の作家として知られ、『モーパン嬢』(Mademoiselle de Maupin, 1835)の序文(「真に美しいものは、なんの役にも立てないばかりだ。有用なものは醜い」。)は唯美主義宣言として知られている。

ヴァーノン・リーの初期作品、例えばBelcaroなどに示される唯美主義的思想は、ゴーティエのそれや『ドリアン・グレイの肖像』で示されるオスカー・ワイルドのそれと似ており、影響関係が想像される。しかし、ヴァーノン・リーの唯美主義に対する態度は概ね批判的である。
長編Miss Brownは、ダンテ・ロセッティを中心にした唯美主義芸術家グループ批判の書と読める。登場人物のひとり、Edward Lewisはアン・ブラウンに『モーパン嬢』を読むように勧める。アン・ブラウンはそれに対してこう答える。"I have never read it....but I have often heard that it is a book which a man does not offer a woman except as an insult."
また、リーの幻想短編にはゴーティエの幻想短編の影響が窺える。例えば、「ウェディング・チェスト」にはゴーティエの「死霊の恋」の影響が想像される。
エッセイでは、例えばLaurus Nobilis収録の'Higher Harmonies'において、ゴーティエの'witch story'に言及している。また、The Handling of Wordsでは "art for art's sake"を"foolish failure"であるとしゴーティエの名前に言及している。(P.118)